成年後見申立てにあたっての診断書の取得が難しい場合

両親が高齢となり,認知症を発症しているような場合で,同居親族による財産の流用や虐待などが疑われる場合などに成年後見の申立てをすることがあります。

そのような場合でも,いわゆる「囲い込み事案」等のように申立時の診察に協力が得られず,成年後見用診断書が提出できない場合については,実務的には,しばしば悩ましい状況がありえます。

このような場合でも,成年後見用の定型の診断書を提出することができず,代わりに本人について過去のカルテなどを提出せざるをえない場合があります。

このような場合,家庭裁判所では,通常はまず本人と同居等をしている親族に対して親族照会を行い,当該親族の意向を確認しています。

通常の親族照会では後見開始及び後見人選任についての意向を確認するということをするのですが,このようなケースでは,これだけでなく,鑑定に協力する意向があるか否かについても照会をしています。

そして,照会の結果,当該親族から,後見開始には反対だが鑑定には協力するといった旨の回答があり,実際に手続が進められたという場合もあります。

囲い込みをしていた親族が,当初は協力を拒否していたが,家庭裁判所の調査官が引き続き説明と説得をした結果,最終的に協力を得られたという例もあります。

勿論,申立てが却下されたり,申立人に対して申立ての取下げの検討を促されることはありますが,こうした困難事案でも,速やかな対応をする必要がある場合は,一度弁護士に相談することをお勧めします。

※なお,家庭裁判所の後見についての運用は,各裁判所ごとに異なる場合があり,また,担当裁判官の個別の判断により,異なることもあります。

☞参考:こちらもご覧ください。存命中の高齢者の財産管理の問題(成年後見)について