遺留分と民法改正

1.遺留分とは
遺留分とは,遺言や生前贈与等による相続財産の処分があった場合に,法定相続人(のうち,配偶者,子等)に,相続財産の一定割合に相当する額(遺留分)を残すための制度です。
例えば,妻と子供2人(A,B)がいる人が,遺産3000万円をすべて子供一人(A)に相続させるという遺言を残して亡くなった(生前贈与等は特にない)場合,妻と子Bとは,遺産の2分の1に法定相続分の割合(妻は2分の1,子は4分の1)を掛けた分の遺産(妻は750万円,子Bは375万円分の遺産)を,遺留分として受け取ることができます。
(実際の金額は,債務の有無や,生前贈与の有無,法定相続人が受け取った遺産の額等をふまえた計算が必要になります)

2.民法改正で変わった点①(減殺請求から価額賠償へ)
これまでは,「遺留分減殺請求権」を行使することにより,遺言等による処分が,遺留分を侵害している範囲でその一部が「減殺」(なかったことになる)され,処分された財産の一部が法定相続人に帰属するというものでした。
対象となった財産は,一部が法定相続分の持分となり共有財産となるため,その分割を行うというのが原則で,例外的に,遺言等により財産を取得した人が,「価額賠償」として,持分の額に相当する金銭を支払うことでこれに代えるというものでした。
上記の事例で言えば,妻は遺産を構成する財産(不動産,預貯金,現金等)の各4分の1の,子Bは各8分の1の共有持分を取得し,Aが価額賠償をするか,遺産を構成する各財産を分割するかすることになっていました。

しかし,令和元年7月以降に亡くなった方の相続については,「価額賠償請求権」の形で行使することになりました。具体的には,侵害された遺留分に相当する額の金銭を,遺言や生前贈与等により多額の財産を受けた人に請求することになりました。
つまり,遺言や生前贈与で財産を受け取った方は,その財産は確実に取得できることになりますので,相続対策として,特定の財産を遺言や生前贈与で処分することがより有効になりました。
ただし,逆に言えば,(合意が成立しない限り)個別の財産を分割することで解決することを求めることができなくなりましたので,相続対策においては,遺留分に対処する現金の確保がより重要となりました。
もっとも,訴訟になった場合には,裁判所の判断で,相当の期限を設けることもできるようになりましたので(改正民法1047条5項),すぐ支払える現金預金がないからといって,直ちに遺産を売却するなど,遺産を手放す必要はありません。

3.民法改正で変わった点②(生前贈与)
また,これまでは,解釈上,相続人に対する生前の「特別受益」,具体的には,生前贈与で,生活維持に有益なものや遺産の前渡しといえるようなものについては,たとえそれが相続開始から相当以前のものでも,すべて遺留分算定の基礎となる財産の額に算入されていました。
しかし,これについても,令和元年7月以降の相続については,贈与等の「特別受益」は,死亡前10年以内にしたものと,被相続人と贈与等を受けた者の双方が遺留分を害することを知ってしたもののみが,遺留分算定の基礎となる遺産の額に算入されることとなりました。
 したがって,今後は,例えば遺留分相当額の金銭請求をしようとする場合に,10年以上前に贈与があったはずだから多額の請求ができるはず,などという主張はできなくなりましたので注意が必要です。