遺産分割審判

1 遺産分割審判

 家庭裁判所での遺産分割の手続は,当事者が審判の申立てを行った事件でも,裁判所の判断(職権)で,調停の手続きをとることを決定する(=調停に付する)ことができるとされています(調停前置主義)。実際にも,例えば,事前にさまざまな方法で連絡をとってみたものの特定の相続人の連絡がつかない等の場合であっても,多くの場合,裁判所は,まず「調停」の手続を開始し,本人に調停に参加するよう求め,出頭しなかった場合等調停手続の続行が困難な場合に,審判事件に移行するという形になることが一般的です。

 したがって,基本的なイメージとしては,遺産分割審判事件は,調停では決まらなかったとき(不成立となったとき)に開始されるものとなります。

2 手続

 審判においては,遺産の評価,寄与分,特別受益,遺産の分割方法等について,裁判官の進行のもとで,審理を進めていく形になります。当事者からの主張や証拠の提出を経て,最終的には,裁判官による審判で決定されることとなります。

3 調停手続との違い

 遺産分割の審判の手続は,狭い意味での「遺産」の分割方法を決める手続になります。この点,調停においては,当事者の合意があれば,狭い意味での「遺産」に含まれない財産の処分・帰属等についても協議及び合意の対象となることと異なります。たとえば,被相続人が死亡した後の収益(たとえば賃料)の分配の問題等は,調停においては対象とすることができますが,本来の意味での「遺産」ではないため,審判では決定されない形になります。また,相続開始後の固定資産税等の負担の精算等の問題も,審判では決定されません。さらに,死亡前の被相続人の預貯金の出金(いわゆる使途不明金の問題)も,審判では決定されない形になります(死亡後に相続人が預貯金の出金をした場合については,相続に関する民法改正により,遺産分割において考慮されるという改正がなされています。)。

 このように,審判手続は,裁判官が遺産の分割方法を決定して,紛争を解決するという方法であり,当事者で解決できない紛争を終局的に解決できるという長所がありますが,相続に関連するあらゆる問題を一挙に解決できるものではないという点もあり,調停と審判の違いを理解した上で,解決方法を考える必要があります。