使途不明金がある場合(本人に渡したと主張された)

Q 亡くなった母の通帳に,多額かつ多数回の出金履歴があります。

 

  長男が母の預貯金口座を管理していたので,長男が引き出して使ってしまったのではないかと思い,長男を問いただしました。長男は,一部,自分が引き出したことは認めましたが,母に頼まれて出金しただけで,そのままお金は母に渡したと述べています。どうしたらよいでしょうか。

 

A 長男は「母に頼まれて」と言っていますが,そもそも,その当時(複数回の払い戻し行為があった場合は,その期間中)の亡母の認知能力が,財産管理をすることができる程度のものであったのかが問題となります。そのため,まずは,当時の医療記録や介護記録などの客観的な証拠を分析する必要があります。

 

  亡母が施設に入居していた場合は,そもそも施設内で現金を所持することができなかった,現金を使う必要がなかったというような事情があれば,長男の「母に現金を渡した」との説明は不合理だということになります(施設の利用契約などを確認する必要があります)。

  また,まとまった金額の払い戻しがあった場合は,現金のまま亡母に渡すのは不自然ですから,長男が払い戻しを頼まれた経緯,具体的な使途や別の口座への預け替えなどを説明できなければ,そのお金がどこに行ったのか,更に長男に説明を求める必要があります。

  また,本人の生活状況に変更がない時期や施設入所中で現金の必要がないといった時期に多額の出金がある場合や,本人の認知能力の低下や流用者(長男など)との同居等のあった時期から急に出金が増えているなど,出金の金額や時期が生活費などとしては不自然なような場合には,合理的な説明がない限り,本人とは無関係に出金された可能性が高いといえます。

 

  長男が,「亡母のために使った」と述べることは多いですが,亡母の生活費の通常額,亡母に高額の資金を利用して物を購入する必要があったのか,当該物は遺産として残っているかなどの状況から不自然であると言える場合があります。

 

  (なお,訴訟手続では,このような場合,長男の側から使途に関する資料を提出してもらう場合が多いです。)

 

☞参考:こちらもご覧ください。使途不明金がある場合の法的手続etc.