1 遺言代用信託とは
親子の間などで信託契約を締結し、その際に、死亡時の財産の帰属者を定める内容を盛り込むことで、言わば、遺言の代わりとするものを、遺言代用信託といいます。遺言と比較して、長所・短所双方があるため、それを理解した上で、活用することが求められます。
2 特徴(死亡前の財産活用と死亡後の後継者の両方を定められること)
将来の相続の発生を想定して、親子間で信託契約を締結する例を考えてみます(以下では、財産を残すことを想定している者を「親側」、受け継がせたい側を「子側」と表記します。)。親側は、信託の委託者という立場になり、存命中は自らが受益者となり、子側である信託の受託者に自分が死亡するまでの期間の利活用を委ねつつ、死亡後の財産の承継先を定めるといったことが、信託契約では可能です。もちろん親子のように推定相続人の関係がある場合に限らず、親族以外の者とそのような信託契約を締結することが可能です。
3 作成した内容を変更できるか
遺言と、遺言代用信託で最も大きき異なるのは、内容を変更する方法の点です。
遺言は、遺言者のみで、従来の遺言を撤回することが可能で、たとえば、内容の異なる新たな遺言を作成するという方法を取れば、過去の遺言を撤回することが出来ます。また、自筆証書遺言であれば、遺言そのものを破棄する形で撤回する方法があります。遺言は内容の変更につき柔軟に対応できるという点がメリットと言えます。また、遺言を作成したこと、及び撤回したこと(書き換えたこと)のいずれも秘密にしておくことが可能です。一方で、遺言代用信託は、信託契約として作成するものであるため、双方が合意するか、信託契約や法律(信託法)の定めに沿って信託を終了させる事由が生じた場合にのみ、信託契約が終了することになります。
上記の長所と短所は表裏一体の関係にあると言えます。高齢者として、死亡時の財産の帰属先を一旦は決定したとしても、折りに触れ、変更したいというニーズがある場合には、遺言の方が柔軟な面があります。
4 紛争になる事例
現在、遺言が作成されるケースの方が圧倒的に多いと推測され、認知症の高齢者が作成した遺言の有効・無効が裁判所で争われる事案の方が判例集などでも多くみられるところです。他方で、信託契約についても、今後、裁判所で、同種の紛争(高齢者が内容を理解して信託契約を締結したのか)という点が争われる事案が蓄積されていくことも予想されます。