Q 遺産として、預金2000万、土地とそこに建っている自宅があります。兄はその建物に住んでいます。土地と建物の価値は約2億円くらいです。この場合も、兄に対して遺留分侵害額請求が認められるでしょうか。
A 遺留分侵額請求権は、法律上認められた権利ですので、行使することに問題はありません。もっとも、遺留分侵害額請求が権利濫用として裁判所に認めてもらえない場合があります。実際に遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)を権利濫用と判断した裁判例は少ないですが、遺留分減殺請求の行使を権利濫用と判断した裁判例として下記のものがあります。
相続人である被相続人の子どもらが協議の結果、1人の子どもが母親を引き取り扶養することで合意し、その合意に基づいて母親を引き取った子どもが、母親と生活するために、自ら費用を負担して遺産である土地上に家を建て、その後20年以上にわたり、被相続人である母親と同居していた事案(東京高裁平成4年2月24日判決)。
この事案は、被相続人の生前に、遺留分を行使しないとの約束がなされており、遺留分の行使は、矛盾行為であることも権利濫用が認められた一つの要因であると考えられます。
実際の裁判で遺留分侵害額請求の行使が権利濫用であると相手方から主張される場合もありますので、お悩みの際は、弁護士にご相談ください。