父が知人女性に全ての財産を遺贈した場合の相続税等

Q.質問

 亡くなった私の父には、相続人が私だけでした。父は、生前遺言書を作成しており、その所有していた土地や多額の預貯金を含む全ての相続財産を知人女性Yさんに遺贈しました。遺留分侵害額の請求を考えているのですが、相続税等はどのようになるのでしょうか。

A.回答

  Yさんには、相続権はありません。しかし、遺言によって有効に遺産の全部又は一部を遺贈することはできます(民法964条)。

この場合、相続財産の遺贈を受けたYさんには、相続税が課されます(相続税法1条の3)。ただし、Yさんは、「配偶者」ではありませんから、配偶者が相続等で財産を取得した場合に適用される税額の軽減は適用されません(相続税法19条の2)。かえって、Yさんに対する相続税額には、2割を加算して課税されます(「被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者」に対する相続税は2割加算されます。相続税法18条)。あなたは、取得する財産がないので、相続税は課税されません。

あなたとしては、父の土地や預貯金の遺贈を受けたYさんに対して、遺留分侵害額の請求を行うことができます(民法1046条)。あなたは、唯一の相続人である子ということですから、Yさんに対して請求できる遺留分は、相続財産の1/2となります(民法1042条)。

あなたが、Yさんに対して遺留分侵害額請求により取得する財産がある場合、その取得財産に対して相続税が課税されます。この場合、Yさんは、あなたの取得財産分相当の相続税額が減少することになります。弁護士に委任して、遺留分侵害額請求を調停や和解等で解決する場合、以上の課税関係も考慮した解決を図ることになることも多いです。