遺言が無効であると主張する場合、どのような流れになるのでしょうか?

Q 遺言が無効であるとして、相続分どおり遺産を取得したいと考えています。事件の流れとしてはどのようなものになりますか。

A 一般的には、以下のような流れとなります。

 

1 証拠収集

 まずは、遺言が無効であることを示す証拠を探します。たとえば遺言能力を争う場合には、病院のカルテ、施設の介護記録などを取り寄せ、被相続人の判断能力が低下していたことを示す資料がないか探します。

2 任意交渉

 ある程度証拠がまとまれば、相手方との交渉に入ります。遺言から利益を受ける相手方は、遺言が無効であるとそのまま認めることはないかもしれませんが、遺言無効確認訴訟を提起されることを嫌い、ある程度譲歩を見せることがあります。その場合、お互いの妥協した和解案で合意をすることで、事件を早期に解決することができます。

3 遺言無効確認訴訟

 裁判外での交渉がまとまらない場合には、遺言無効確認訴訟を提起する必要があります。

 遺言無効確認訴訟では、収集したカルテ等の証拠を提出するとともに、証人や当事者本人の尋問をして、遺言が無効であると裁判官に判断してもらうことを目指します。

 一方で、訴訟が続いている中でも、和解をすることは可能です。一般的には、双方から提出書面がでそろって尋問をする前の段階、また尋問が終わった段階などで、裁判所から和解が勧められることとなります。ここで遺産の分け方まで視野に入れた和解ができた場合、のちの遺産分割や遺留分をめぐる争いも含めて解決することができます。

 和解ができない場合には、裁判所が証拠に基づいて遺言の有効性について、判決を下すこととなります。

4 遺産分割、遺留分の争い

(1)遺言無効確認訴訟で勝訴した(遺言が無効と判断された)場合には、遺産分割協議をして、それぞれの取り分を定めることになります。仮に、遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立て、それでもまとまらない場合には裁判所の「審判」によって、公権的に遺産の分け方を定めることができます。

(2)また、遺言無効確認訴訟で敗訴した(遺言が有効と判断された)場合、その遺言が遺留分を侵害するものであれば、遺留分侵害額の請求をすることとなります。この話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てる点は(1)と同様ですが、それでもまとまらない場合、地方裁判所で訴訟をして、遺留分侵害額について定めることになります。