遺言が無効であると主張する裁判は、誰が原告になり、誰が被告になる流れになるのでしょうか?

Q 遺言が無効であるとして、遺言無効確認訴訟をしようと考えています。誰が原告となり、誰が被告になる流れになるのでしょうか?

A 一般的には、以下のような考え方を取ります。

1 原告となるものは誰か

 相続人は、単独で、この訴訟の原告になる事ができます(詳細は下記3参照)。多くの場合、その遺言が存在する場合に(遺言が無効になる場合と比較して)自らが承継できる財産が少ない等という不利な立場にある相続人が、遺言無効確認訴訟を提起することが一般的です。

2 被告となるものは誰か

 原告以外の者で、遺言についての法律上の利害関係を有するものが、被告となります。一般的には、原告以外の相続人や、受遺者が被告になります。ここで注意が必要なのは、必ずしも、相続人の全員を巻き込んだ形の訴訟とすることが必須ではないと、判例で考えられている点です(すなわち、相続分を指定した遺言や、遺産分割方法を指定した遺言について、その無効を確認する訴えは最高裁判例により「固有必要的共同訴訟」ではないと整理されています。)。したがって、相続人であっても、その当事者を巻き込むことが明らかに全く無益であるケースや、訴訟に巻き込まないことが妥当という個別事情がある場合にあっては、その者を被告とせずに、訴訟を提起することが出来ます。

 なお、これ以外に、遺言執行者が明記された遺言書の場合、当該遺言執行者を被告とする方法も存在しています。たとえば、かなり人数の多い受遺者が記載された遺言の場合、その全員を被告とするのではなく、遺言施行者のみを被告とすることが出来ます(これを「法定訴訟担当」と言い、この場合は受遺者等にも効力が及びます。)

3 具体例による検討

 たとえば、相続人が3名(長男・二男・三男)が存在し、亡父によって、長男に遺産の全てを相続させるという内容の遺言が作成されていたというケースを見てみましょう。

 この場合、その遺言が無効であると考える二男は、①自ら(単独)で原告になって長男を被告として、又は、②自らと三男が共同で原告となって長男を被告として、遺言無効確認の訴えを提起することが出来ます。つまり、上記①は相続人の全員が加わっていない形の訴訟になり、上記②は相続人の全員が加わった形の訴訟になりますがいずれでも可能とされています。ただし、上記①の場合の訴訟を行った場合は、判決の効力(既判力)が三男に及ばないという問題があります。そのため、上記①のような訴訟を行うことは可能であるものの、将来、三男に判決の効力が及ばないことが問題がないかという点を慎重に考える必要があります。

 また、上記①②以外に、③二男が原告となって、長男と三男を被告として、遺言無効確認の訴えを提起することが出来ます。この場合、三男は、心情的には遺言が無効になった方がいいと考えているもの、特に積極的に訴えを提起する立場(原告)になることを希望しなかったという場合になります。そうした者を被告にするという方法も可能であり、しばしば用いられています(この場合の三男は、勝訴・敗訴のいずれであっても、判決の効力が及ぶことになります。)。