不動産を無償使用している相続人がいる場合

Q 亡父の遺産である土地の上に,長男(相続人はほかに長女と二男)が亡父の許諾を得て建物を建て,その土地を無償で使用している場合,この土地(遺産)の評価はどうなりますか。

また,長男が10年間,無償で(地代も払わないで)土地を利用してきたこと自体を特別受益とみることはできませんか。

 

A1 遺産の評価について(及び使用借権が特別受益とされないかについて)

 このような場合は,亡父と長男との間の使用貸借契約の成立,→当該土地には使用借権が設定されているとみて,土地を評価します。

 使用借権は第三者への対抗力がありませんが,この土地を売却しようとしても,長男所有の建物が建っているので,事実上は,売却が困難となります。そのため,評価額は,更地価格の1割から3割程度減額されます(非堅固建物の場合は,1割程度が減額されると考えてよいです)

 このように考えられる結果,遺産分割の際には,長男の使用借権は,特別受益となります(ただし持ち戻し免除の意思表示が認められるか否かはさらに検討する必要があります。例:亡父と同居して面倒をみるという負担を長男が負っていた場合など)が,通常は,結局のところ,土地上に建物を所有ししている長男が遺産分割によってこの土地を取得することになる場合が多いと思われます。そうすると長男は,完全な所有権を取得することになるため,特別受益を問題としないで結局更地評価とするという実務の扱いが主流となっています。

 

A2 10年分の地代相当額を特別受益とみられないかについて

 遺産開始時の遺産の減少分が特別受益額である一方,地代相当額は遺産の価値とは関わらないため,実務は,地代相当額は特別受益額とならないという考えによっています。