Q.一部の共有者の所在がわからない場合でも、共有物は分割できるのでしょうか?

Q.一部の共有者の所在がわからない場合でも、共有物は分割できるのでしょうか?

 

 

A.共有者の所在がわからない場合でも、以下のように、共有物分割を実現しうる方法がございます。

1 現行の法制度

 ①不在者財産管理人の選任

 不在者財産管理人とは、所在不明者の財産を管理する者がいない場合に、利害関係人等の申立てによって、家庭裁判所が選任する財産管理人です。この不在者財産管理人が、所在不明の共有者の代わりに、分割協議や訴訟活動を行うことで、共有物分割を実現することができます。不在者財産管理人は、利害関係のない親族や、弁護士・司法書士などから選ばれます。

 ただし、この方法によって共有物の分割をする場合、分割協議の成立前にも家庭裁判所の許可を得なければならないなど(民法28条)、手続に時間を要するおそれがあります。

 ②失踪宣告

 家庭裁判所の「失踪宣告」を得ることで、所在不明共有者がすでに死亡しているものとみなし、その相続人と分割協議を行うことが考えられます(民法30条・31条)。

 失踪宣告は、不在者の生死が7年間明らかでないとき、または不在者が過去に災害等の危難に遭いその危難が去ってから1年間生死が明らかでないときに、申し立てることができます。そのため、所在不明の期間によっては失踪宣告制度を利用することはできないことになります。

 

2 改正後の法制度

 令和5年4月1日から施行される改正民法のもとでは、さらに利便性の高い方法が追加されます、

 ③所在不明共有者の持分の取得(改正後民法262条の2)

 改正民法下では、不動産の共有者は、所在不明共有者の持分を自分に取得させる旨の裁判を求めることができます(改正後民法262条の2第1項)。この方法を用いれば、裁判によって強制的に所在不明者を共有関係から外すことができますから、共有物分割が可能となります。

 ただし、その不動産について別に共有物分割訴訟や遺産分割請求がされている場合で、他の共有者から異議が出されたときは、この制度を利用することはできません(同条2項)。

 また、その所在不明共有者の持分が、遺産分割をすべき相続財産に当たる場合には、相続開始の時から10年が経過しない限り、この制度を利用することができないとされています(同条3項)。たとえば、自宅を単独所有する夫Aが死亡し、これにより妻Bと子Cが持分2分の1ずつ自宅を共有する状態になったが、妻Bが行方不明であるような場合、夫A死亡時から10年が経過しない限り、子Cが妻Bの持分を取得する旨の裁判を得ることはできません。

 ④所在不明共有者の持分の譲渡(改正後民法262条の3)

 改正民法下では、ある不動産について、所在不明共有者以外の全員がその共有持分を特定人に譲渡する場合には、所在不明共有者の持分も一緒に譲渡できる権限を付与するよう、裁判所に請求できます(改正民法262条の3第1項)。つまり、所在不明共有者がいたとしても、それ以外の共有者間で換価分割(共有物を売却し、売却代金を分け合うこと)を行うことの合意ができれば、これを実現できるということになります。

 ただし、③と同様に、所在不明共有者の持分が遺産分割をすべき相続財産に当たる場合、相続開始時から10年が経過しない限り、この制度を利用できません(同条2項)。