市街地再開発事業での立ち退き

1 再開発事業における所有権の移転

市街地再開発事業においては,施行者(市街地再開発組合等の事業の実施主体)が定めて,行政庁の認可を得た「権利変換計画」で定めた「権利変換期日」に,権利変換が行われ,再開発の対象となる土地の所有権は計画で定めたものに,建物の所有権は施行者に移転します。また,土地や建物についての借地権等は消滅します(都市再開発法87~89条)。

つまり,それまで土地や建物を所有権や賃借権に基づき占有・使用していた方々は,土地や建物を使用する権利を失うことになります。これは,それまでの建物を解体し,土地上に再開発のための建築物を建てるために認められているものです。

2 都市再開発法上の明渡

そして,組合等の施行者は,工事のために必要があれば,占有者に対して,期限(請求から30日以上後の日)を定めて,明渡を請求することができます(都市再開発法96条1項)。

一方,権利変換期日において所有権・賃借権等の権利に基づき土地や建物を占有していた方などは,権利変換期日後も,上記の明渡期限までは,従来通りの占有を継続することができます(同95条)。請求を受けた場合には期限までに明け渡す必要がありますが,明渡による損失についての補償金の支払いがなければその必要はありません(同96条3項)。

3 明渡の実現方法

都市再開発法上の明渡請求所定の期限後も,土地等の明渡がされない場合は,施行者は,都道府県知事に明渡の代執行を請求する方法で明け渡しを実現することが可能です。また,明け渡すべきものが不明の場合には市町村長に明け渡しの代行を請求することもできます(都市再開発法98条)。

このほかに,所有権に基づき,明渡請求訴訟等の裁判所での手続きを通じて明け渡しを求めることもできます。