本採用前(内定後や試用期間中)の労働者の扱い

1.内定取消しをしたい場合

一度労働者に内定を出したが,急に経営が厳しくなったので取消したい,労働者の印象が変わった(例えば,異常な言行が分かった)ので内定を取り消したい,といったように,一度内定を出しても,取り消したくなることはあるかと思います。

内定は,会社によって多種多様な形態の者がありますので,その法律上の性質を一義的に断定することはできませんが,多くの裁判例では,内定により「就労または労働契約の効力の発生始期付きで解約権留保付き」の労働契約が成立すると考えられています。

つまり,内定を取り消すということは,始期前に,この解約権を行使して契約を解約しているか又は労働者と同様に解雇しているかと評価されることが多いといえます。

しかも,この解約権も,「客観的に合理的と認められ」「社会通念上相当」な範囲に限られます。

したがって,例えば内定者が内定後に犯罪をしたとか,内定前の犯罪が分かったとか,突然経営が苦しくなったといった理由があれば,内定取り消しは認められるかと思いますが,単に内定者の態度や性格が気に入らないとか,経営方針を変えたといった程度では,内定取り消しが無効とされることもあるでしょう。

 内定取消が許容されるか否かは,個別の事情を踏まえた総合的な判断が求められるため,個別に弁護士に相談ください。

2.試用期間後の本採用をしたくない場合

 会社によっては,採用から何か月かは試用期間扱いにして,その中で採用したくない事情があれば,本採用しないというか使いにしている会社もあるかと思います。

 試用期間は,その性質を判断するうえでは就業規則や職場の労働慣行に応じて個別に判断する必要がありますが,多くの場合,試用期間中の補充調査や勤務状態の観察を踏まえて適格性を判断し,適格性がない場合には本採用しないという解約権が付いた労働契約と考えられています。

 この解約権の行使が認められるか否かは,正社員に対する解雇よりは緩やかに判断されますが,内定取消しよりは厳しく判断されます。
実際に本採用を拒否するには,経歴詐称の発覚や,改善が見込めないレベルの遅刻,欠勤等の勤務不良,経営悪化などの相当な理由が必要になることが多いと思われます。

 内定取消同様,個別の事情を踏まえた総合的な判断が求められるため,個別に弁護士に相談ください。