残業代の支払いを巡る問題

1 はじめに
 賃金は、労働時間に応じて支払われるものであり、定められた時間の範囲で業務が行われるのが本来です。
しかし、実際には残業が行われており、企業は残業代を支払う必要があります。

2 割増賃金
 割増賃金が支払われる場合としては、①時間外勤務(1日8時間、週40時間を超えて労働した場合)、②休日勤務(休日に労働した場合)、③深夜労働(午後10時以後午前5時まで労働した場合)の3つの場合があります。
※ 本来残業をさせるためには三六協定を締結するなど、法定の要件が必要となりますが、そのような要件を満たしていない場合でも、残業代を支払う必要があります。違法な行為により、企業が救済されるいわれはないからです。

3 管理監督者
 なお、時間外労働をしたとしても、「管理監督者」であれば割増賃金を請求することはできません(労働基準法41条)。
また管理監督者であるか否かは、実質によって判断されますので肩書のみを与えても管理監督者と認定されるわけではありません。
① 管理監督者とされるためには、まず一定の範囲で人事権を持っていることが必要です。人事評価の権限のみではなく、採用や解雇の権限があることが必要です。
② 次に、一定の経営との一体性が必要です。例えば、商品の選択や販売方法、販売価格について何ら決定権限もなく、単に本社の指示どおりに働いているにすぎない店長などは、管理監督者であるとはいえません。
③さらに、管理監督者とされるためには、賃金等や会社内での待遇がその地位にふさわしい者である必要があります。基礎賃金や役職手当、ボーナスの支給に考慮が払われているか否かも大切な要素となります。

4 遅延損害金と付加金について
 残業代を企業が支払わない場合、最終的に労働者は、訴訟手続をとることがあります。
この場合裁判所は、企業に対し、未払残業代のほか、これと「同一額」の付加金の支払いを命ずることができます(労働基準法114条)。すなわちむやみに残業代の支払いを行っていると、本来支払うべき金額の2倍の残業代を支払うことになる場合もあります。
また、当該労働者が退職している場合は、未払残業代にかかる遅延損害金の利率は年14.6%の割合となります(賃金の支払の確保等に関する法律6条、2条、同法施行令1条。ただし、合理的な理由によりその存否を裁判所又は労働委員会で争っている場合を除く。)。
企業側としては、労働者側の残業代請求が正当であるのか否かを速やかに見極めた対応をする必要があるといえます。