業務災害とは、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「傷病等」)をいいます(労働者災害補償保険法7条1項1号)。
ここでいう「業務上」といえるためには、労働者の業務と傷病等の結果との間に、「当該業務に内在又は随伴する危険が現実化したと認められるような」「相当因果関係」が認められることが必要とされています。
この場合の保険給付には、次のようなものがあります。
この記事で説明している業務災害と、複数業務要因災害、通勤災害とで、保険給付の内容は、基本的に同一ですが、保険事故の性質が異なるために、別個の保険給付と位置付けられており、その関係上、通勤災害に関する保険給付では「補償」という語が削除され、他方、複数業務要因災害に関する保険給付では「複数事業労働者」という語が追加されています。
1 療養補償給付
原則として療養の現物給付が行われます。療養の現物給付とは、現金の支給ではなく、医師の診察、薬の支給及び看護を受けることができること等を意味します。ただし、例外的に、一定の場合には、療養の現物給付に代えて、療養に要した費用の支給を受けることができるときもあります。
2 休業補償給付
業務上の傷病等による療養のため、労働することができず、賃金を受けることができなくなった場合には、所定の額の休業補償給付が行われます。
3 障害補償給付
業務上の傷病等が治ったものの、身体に障害が残った場合(症状が固定した場合)には、障害補償給付を受けることができます。障害補償給付には、障害の程度に応じて、障害補償一時金が支給される場合と、障害補償年金が支給される場合があります。
4 傷病補償年金
業務上の傷病等が療養開始後1年6か月を経過しても、治っていない場合であって、障害の程度が1級から3級まで(全部労働不能)に該当するときは、その状態が継続している間、その労働者に傷病補償年金が支給されます。
5 遺族補償給付
業務上の災害により労働者が死亡した場合、その死亡当時、その労働者の収入によって生計を維持していた配偶者並びに所定の要件を満たす子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹のうち受給資格の認められる最先順位にある者は、所定の額の遺族補償年金等を受給できます。
6 葬祭料
業務上の災害により労働者が死亡した場合、遺族は、葬儀等のために通常要する費用を考慮して厚生労働大臣が定めた額の葬祭料を受けることができます。
7 介護補償給付
業務上の災害により、障害補償年金や傷病補償年金を受ける権利を有する労働者が、その年金の支給事由となる障害によって常時又は随時介護を要する状態であり、かつ、介護を受けているなどの一定の要件を充足する場合には、介護補償給付が行われます。