道路上に違法工作物が設置されているが,その設置者の氏名・住所を知ることができない場合に,当該工作物を除去することができますか

Q 道路上に違法工作物が設置されているが,その設置者の氏名・住所を知ることができない場
  合に,当該工作物を除去することができますか。

A できます。

 道路上に違法工作物が設置されているが,その設置者の氏名,住所を知ることができない場合に,公示送達を経て代執行をする時間はありません。
 道路交通法81条2項は,このような場合に,警察署長は自ら当該工作物を除去することができると定めています。

<即時強制>
 義務を命ずる暇のない緊急事態や,犯則調査や泥酔者保護のように義務を命ずることによっては目的を達成しがたい場合に,相手方の義務の存在を前提とせずに,行政機関が直接に身体または財産に実力を行使して行政上望ましい状態を実現する作用を「即時強制」と言います。

<例えば>
 警察官職務執行法の保護(3条),避難等の措置(4条),犯罪の予防及び制止(5条),立入り(6条1項),武器の使用(7条),消防法29条の破壊消防などがこれにあたります。また,出入国管理及び難民認定法52条1項が,退去強制令書により,退去強制を執行できるのも,即時強制の例です。

 設問の場合にかかる道路交通法81条2項と類似の規定は,道路法44条の2や(道路管理者が,違法放置物件の占有者等の氏名,住所を知ることができないため,これらの者に必要な措置をとることを命ずることができない場合に,自ら当該物件を除却できることとされているもの),道路法67条の2(道路管理者が,長時間放置された車両について,現場に当該車両の運転をする者その他当該車両の管理について責任がある者がいない場合に,当該車両を移動できるとされているもの)にも置かれています。

<参考:手続的保障について>
 即時強制は,事実上の行為であるので,行政手続法2条4号イにより,行政手続法の不利益処分の定義に該当しないことになり,同法3章の不利益処分の手続が適用されません。
もちろん,緊急性のある場合に事前手続を行うことが難しいという事情はありますが,手続的保障への配慮の観点から,様々な法令において,手続的配慮を意識した規定が置かれています。
例:児童福祉法33条5項本文